スコーンは、ただの焼き菓子ではありません。
その背景には、スコットランド王権の象徴「スクーンの石」、イギリス王室の戴冠式、そしてアフタヌーンティーの文化が深く結びついています。
『ロイヤルスコーンパーティーへようこそ』は、アフタヌーンティーサロン「Art on Tea Table」を主宰する洋菓子・食卓芸術研究家の藤川温子さんが、スコーンをめぐる歴史や文化を、美しい写真とともにまとめた一冊です。
−−スコーンの歴史を“物語として味わう”本
本書の大きな魅力は、スコーンの作り方だけでなく、その背景にある文化や歴史を深く辿っていることです。
スコーンはスコットランドで生まれ、もとは「バノック」と呼ばれる素朴なパンが原型とされています。
本書では、そのスコーンの歴史がどのように今の形に進化していったかを、図解やエピソードを交えてわかりやすく紹介しています。
−−スコーンの名の由来──「スクーンの石」の壮大な物語
スコーンの名前の由来とされる「スクーンの石」。
これは中世のスコットランド王の戴冠に使われ、のちにイングランド王権に移された歴史を持つ、イギリス文化を語るうえで欠かせない石です。
本書では、この石がどのように王室の象徴となり、どのように歴史のなかで扱われてきたのかを丁寧に解説。
スコーンを食べる時、まったく違う“響き”を感じられるようになります。
−−ロイヤルスコーンの作り方と、なぜ“縦に切ってはいけない”のか
本書ではイギリスの正統派「ロイヤルスコーン」の作り方を詳しく紹介。
均一にふくらむための生地の扱い方、側面が白く立ち上がる“ロイヤルスコーン特有の姿”の秘密もわかります。
さらに多くの人が疑問に思う「スコーンはなぜ縦に切ってはいけないのか」についても、歴史的背景とともにわかりやすく説明。
単なる“マナー”ではなく、文化を尊重するための所作であることを知ることができます。
レシピ・マナー・テーブル文化まで一冊で味わう
本書にはロイヤルスコーンのほかにも
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フランボワーズコンポート
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パッションフルーツカード
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コロネーションチキンサンド
など、ティータイムを彩る3つのレシピも収録。
さらに、紅茶・ティーカトラリー・テーブルフラワーなど、スコーンをより美味しく楽しむための “文化としてのティータイム” を写真とともに丁寧に解説しています。
−−文化を知ると、スコーンはもっと美味しくなる
藤川温子さんが本書で伝えたかったのは、「背景を知ると、味わいが変わる」ということ。
王室の歴史、スコットランドの物語、アフタヌーンティーの文化を知ることで、スコーンは“単なる焼き菓子”から“文化体験”へと変わります。
紅茶を淹れ、スコーンを割るひとときが、ゆったりとした“文化の時間”になる一冊です。