著者インタビュー
アフタヌーンティーに欠かせないスコーンは「石(スクーン)」のことだった?
藤川温子(ふじかわあつこ)

アフタヌーンティーサロン「Art on Tea Table」を主宰し、洋菓子・セイボリー研究家として活動する藤川温子さん。
1つのお菓子の背景に広がる歴史、文化、美術までを丁寧に読み解き、テーブルの上で“物語”として表現する独自の世界観が、多くのファンを魅了しています。
そんな藤川さんが初の著書として選んだテーマは「スコーン」。
けれど、本書は単なるスコーンのレシピ本ではありません。
ヨーロッパの食文化・歴史・美意識を深く旅するような一冊です。
今回は、出版に込めた思い、スコーンに隠された物語、そして執筆を通して見えてきた“自分の軸”について伺いました。
ティーレッスンで伝えきれなかった“背景の物語”を書籍に
藤川さんが主宰する「Art on Tea Table」では、洋菓子や食器に宿る文化的背景を紐解きながら、当時の情景を想像し楽しむアフタヌーンティーレッスンを開催しています。
しかし、レッスンはどうしても時間に限りがあり、伝えきれない物語がたくさん残ってしまうといいます。
「レッスンのたびに膨大な資料が積み上がっていくのですが、それをすべて言葉で伝えるには限界があります。文化や歴史を丁寧にまとめた形に残したいという思いが強くなり、本にすることを決めました」
SNSでの発信が増え、同じ分野で活動する人も増える中で、 “自分の視点をきちんと文章にして残したい”という気持ちが出版の契機となりました。
「スクーンの石」──スコーン文化の深い物語
藤川さんが特に強い関心を寄せたのが、スコーンの名前の由来とも言われる「スクーンの石」。
スコットランドの古代王権を象徴する石であり、イングランドとスコットランドの歴史を語るうえで欠かせない重要な存在です。
「この石の歴史を知ると、スコーンというお菓子が“ただの焼き菓子”ではなく、国の歴史や文化を背負った特別な存在だということがわかります。背景を知ることで、味わいそのものが変わると思うんです」
本書では、スクーンの石と王室の戴冠式の関係、スコットランドとイングランドの国交の歴史、宗教・文学にも言及し、スコーンを通じてヨーロッパ文化を立体的に体感できる構成になっています。
スコーンをもっと美味しくする“マナーと設え”
本書には、作り方だけでなく、スコーンにまつわるマナーやテーブルコーディネートの方法も丁寧に紹介されています。
「スコーンはナイフで縦に切らない、というマナーの背景にも理由があります。
食べ方の所作には歴史があり、理解することでテーブルの景色が一段と美しく見えてきます」
文化を知ることで、ティータイムは“行為”から“体験”へ。
文化と歴史を知ることで、ティータイムがもっと豊かになる
最後に、どのような読者に本を届けたいかを伺いました。
「アフタヌーンティーやクリームティーを楽しみながら、この本をゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。
スコーンの背景にある文化や歴史を知ることで、日々のティータイムが今よりもっと豊かになると思います」
◆書籍情報
ロイヤルスコーンパーティーへようこそ
藤川温子
定価:本体価格1818円税
ページ:134ページ、カラー
版形:A5版
発売日:2025年6月26日
ISBN-10 : 4911115106
刊行: Booko出版