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著者インタビュー

数学は感じると楽しくなる! 右脳で数式を理解する

蔵本貴文(くらもとたかふみ)

学びなおし 大人の高校数学

数学で右脳が目覚める なぞりがき三角関数

著者:蔵本貴文

ページ数:50

価格:980

半導体エンジニアとして、日々数式と向き合いながら仕事をする一方で、

これまで数多くの数学書・技術書を商業出版で世に送り出してきた蔵本貴文さん。

そんな蔵本さんが今回選んだテーマは、「なぞりがき」という、数学書としては非常にユニークな切り口でした。

なぜ、三角関数を“なぞらせる”本を書こうと思ったのでしょうか。

 数学は「理解」よりも「感覚」から始まる

「この本で一番伝えたかったのは、数学は必ずしも“理解してから使うもの”ではない、ということです」

蔵本さんは、半導体の特性を数式で表現するモデリングの仕事に携わり、

微積分や三角関数を日常的に使っています。

「私のような仕事をしている人間にとっては、数学を感覚的に扱うことは当たり前です。

でも、学校で数学の学習が止まってしまった人にとっては、数式だけが難解な暗号として残ってしまっていることが多い」

そこで着目したのが、「手を動かす」という身体的な行為でした。

「高校数学というと難しく感じますが、グラフや数式を実際になぞってみると、

意味がわからなくても“何かがつながる感覚”が生まれる。

その入口を作りたかったんです」

三角関数は、実はとても身近な存在

本書では、いきなりsinやcosの定義から入るのではなく、

「波とは何か」という話から始まります。

「三角関数というと身構えてしまいますが、

波という現象自体はとても直感的です。音も光も電波も、すべて波ですから」

振幅、周波数、位相といった言葉も、

本書では数式より先に“形”として体験する構成になっています。

「なぞりがきを通して波の動きを身体で覚えたあとに数式を見ると、

以前よりずっと自然に頭に入ってくるはずです」

後半では、スマートフォンの通信に三角関数がどのように使われているかにも触れ、

数学が日常の技術とつながっていることを実感できる内容になっています。

商業出版ではなく、この形を選んだ理由

蔵本さんは、これまでに多くの数学書を商業出版で刊行してきました。

それでも今回は、従来の数学書とは異なるアプローチを選んでいます。

「なぞりがきという発想自体が、かなりニッチで実験的なものです。

“読む数学書”ではなく、“手を動かす数学書”をやろうとすると、

どうしても従来の枠組みには収まりにくい」

だからこそ、今回は内容や構成に妥協せず、

自分が本当に届けたい形を優先したといいます。

大人の学び直しにこそ、向いている一冊

本書の想定読者は、学生ではなく、

かつて数学を学んだことのある大人たちです。

「一度挫折した経験があるからこそ、

“わからなくてもいい”“感じるだけでいい”という入口は意味を持つと思います」

なぞりがきを一冊分やり終えたあと、

改めて数学の本を開いたときの感覚の変化を、ぜひ体験してほしいと語ります。

「理解しようとしなくても、

すでに身体の中に“地図”のようなものができている。

その状態で数学に触れると、見え方がまったく変わるはずです」

数学の本質に、もう一度触れるために

『数学で右脳が目覚める なぞりがき三角関数』は、

解法を覚えるためのドリルでも、試験対策の参考書でもありません。

数学を、

考える前に感じるものとして捉え直す

そのための、新しい入り口を提示する一冊です。

「難しい計算はいったん脇に置いて、

まずは手を動かしてみてください。

そこから数学の本質に触れてもらえたら嬉しいです」